マメ知識

【マメ知識】水草に必要な栄養素 その① 水草に必要な元素

みなさんこんにちは!
アクアフォレストメンテナンス事業部の轟です!

本日は、水草が育つうえで必要な栄養素についてお話致します!
水草水槽を管理する上で、一番難しいのが「肥料を使いこなす」事だと私は思っています。
様々な要因(使用している底床、水質、水草の量、光量etc。。)が重なりあい、いったい何が足らないのか!?何が多いのか!?という事が分からなくなることがよくあります。
今回のブログでは(またも長くなるので二つに分けますが)そんな難しい肥料の使い方を皆様にお伝えしたいと思います。
未だに分からん!という事が多いので、今回ブログで書いた事と、私が未来にお伝えすることに齟齬が出ると思いますがその辺はご愛嬌という事でご勘弁ください(笑)
私が今現在知っている事からなるべく客観的に考察して、実際のレイアウト制作に活かしているものなので真理とまでは言えませんが、それほど間違ってもいないでしょと思っております。

言い訳はこれくらいにして本文に移りたいと思います!
まずは、植物の必須栄養素からお話し致します。

植物には必須栄養素として14元素あります。
必須栄養素は植物が生きていくために外部から取り込んで代謝する必要があるものです。
(人間がご飯を食べないと生きていけないのと同じですね)
必須栄養素は欠乏状態が長く続くと大きく調子を崩し最悪枯れてしまいます(これも人間と一緒ですね。食べないと死にます。。)
要求量に応じて、多量要素、微量要素に分けられています。
多量要素は要求量に応じてさらに二つのグループに分かれます。
それぞれの元素は下記の通りです。

多量一次要素
炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)

多量二次要素
カルシウム(Ca)、硫黄(S)、マグネシウム(Mg)

微量要素
ホウ素(H)、塩素(Cl)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニッケル(N)

この必須栄養素の内、CとHとOを除いたものを無機栄養と言います。
基本的に植物は水に溶けている無機栄養になったものしか吸収出来ないので、肥料として水草に与えるものはこれに当たります。
ちなみにCとHとOは水とCO2から取り込んでいるので、基本的に与える必要は無いですよ(水中だしね)
多量一次要素よりCとHとOを除いた窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)は特に重要な要素のため「肥料の三要素」と呼びます。

※無機物と有機物について
有機物とは
・複雑な化合物が多い
炭素を中心に出来上がっています。
炭素は色んな物質とくっつきやすいので、紙とかプラスチックとか石油とか魚とか草とか、たーくさんあります。
いま確認されているだけで1000万種以上あるみたいです。

無機物とは
・単純な化合物が多い
有機物以外の物質全般です。
カルシウムとか過酸化水素(オキシドールの原料)とかリチウムとかですね。
~酸とか~塩(シオではなくエン)とか金属っぽい名前のものは大体無機物です(適当)
ダイヤモンドや二酸化炭素のように炭素を含んでいても例外的に無機物とするものもありますよ!

「単純な化合物」という部分が大事で、植物はあまり複雑な化合物はそのままの状態では栄養として取り込めないんですね。
人間も食べた物をそのままエネルギーとして吸収できないので、口で咀嚼→各酵素でさらに分解→小さな分子にして吸収していますよね。
植物は消化器を持たないので、自分で有機物を吸収できる大きさまで小さくする機能を持っていません。
そのため土壌、水中にある有機物をバクテリアが分解することによって初めて植物が吸収できるようになります。
スーパーで「有機栽培の~」みたいな謳い文句で販売さている野菜を見たことがあると思います。
同じ野菜でも有機栽培の方が高くありませんでしたか?
これは植物がすぐに吸収出来るよう化学的に合成された肥料を使わず、一手間かかる有機栽培の方が生産コストが高いからなんですね。

じゃあ、化学肥料だけでいいじゃないか!

と思いますが、水槽で水草をキレイに育てる場合は無機栄養と有機栄養を上手に使い分ける必要があります(その方が良いと考えています)
それぞれ有機も無機も一長一短なので状況に応じて使い分けると良いです!
この当たりの実践的な詳しいお話しは「水草に必要な栄養素 その②」でやりたいと思います!

今回はまず基本知識として

・リービッヒの最小律
・必須栄養素の機能
・欠乏症状
・過剰症状

この4点についてお話しようと思います。

まずは「リービッヒの最小律」からいきます!
水草を育てるにはバランスが大事だ!←コレいろんなところで言われていますがどうしてかというと植物の成長は「最も少ない要素」に左右されるからです。
これを「リービッヒの最小律」と呼びます。
下の画像は最小律を分かりやすく図案化した「ドべネックの要素樽」と呼ばれるものです。
各要素を樽の側板に、水位を成長スピードに見立てています。
水が漏れているところ、この場合だと窒素(N)が最小因子(制限因子)ですね。
光やCO2、リン(P)やカリウム(K)は十分にありますが、窒素(N)が少ないため成長レベルは赤いラインに抑えられてしまいます。
そこで、窒素(N)を十分に与えた場合、板が長くなるので水漏れが無くなります。
次に短いのはカリウム(K)なので。。。。と続きます。
このように植物の成長は最も少ない要素によって規定されるため、一部の元素が多くあっても意味がありません。むしろ余ってコケの要因になります。
そのため、全ての要素がバランス良く水槽内にあることが重要なんですね。

しかし実際にはこんなに単純ではなく要素間に相互関係がかなり複雑にあるようで単純にはいきません。
また、使用している器材(光量)等の性能や水草の種類によっても必要な要素に大きな違いが出る為に、一概にああしろ!こうしろ!という具体的なアドバイスが出来ないのが現状です。
綺麗な水草水槽を作る近道には水槽をよく観察して欠乏症状と過剰症状を見分けて「バランスを取る」ことに重点を置きましょう!

次は・必須栄養素の機能・欠乏症状・過剰症状です。
簡単な表にまとめてみましたのでご覧ください!
水槽内でよく発生する部分は赤に、とくに注意する点はオレンジにしてあります。
色が無いからって欠乏、過剰が起きないわけじゃないので注意!

三要素

機能 欠乏症状 過剰症状
窒素 ・植物の原形質の内、40~50%は窒素化合物で、もっとも必要とされる要素
・葉緑素や酵素、ホルモン合成等様々な形で利用される
・葉や茎を大きく太く成長させる
・光合成量は窒素量に比例する
・下葉から黄色になる(下葉が落ちる)
・植物全体が黄色くなる
・根が短い、成長が遅い
・生長点の葉が小さくなる
・葉が濃い緑色になる
・病気や虫への抵抗力が弱まる
・ヒョロヒョロとした姿になる
リン ・DNAや細胞膜、ATP等の原料になる
・代謝の早い部位に多く存在する
・生長、発芽、開花に重要とされる
・葉に光沢が無くなる(ツヤが無い)
・新芽やランナーの発生や伸びが鈍化
・生長点の葉が小さくなる
・過剰症状はあまり出ない
・亜鉛、鉄、マグネシウム欠乏を招く
カリウム ・体内のタンパク質や炭水化物の移動を助ける
・浸透圧調整機能を持つ
・光合成に必要なクロロフィル前駆体の合成に関わる(低光量下ではとくに大切)
・下葉から白化する
・葉脈が黄色になる(クロロシス)
・葉にしわがよる、縁が波打ったようになる
・窒素と同時過剰吸収しやすい
・鉄、マグネシウム、カルシウムの吸収を阻害する

多量二次要素

機能 欠乏症状 過剰症状
カルシウム ・他の栄養素を運搬する
・細胞内の情報伝達をする
・代謝時に発生する有機酸の中和
・生長点の白化
・根の成長が遅くなる(太く細根の少ない状態)
・根腐れしやすくなる
・過剰症状はあまりでない
・リン、マグネシウム、カリウムの吸収を阻害する
※水槽内に多量にある場合、pHを上昇させる
マグネシウム ・葉緑素を構成している
・酵素の活性剤
・体内のリンの移動を助ける
・下葉から黄色になる
・葉脈以外が黄色になる(葉脈は緑のまま)
・過剰症状はあまりでない
・カルシウム、カリウムの吸収を阻害する
硫黄 ・アミノ酸、タンパク質の元 ・下葉から黄色になる(下葉が落ちる)
・植物全体が黄色くなる
・過剰症状はあまりでない
※水槽内に多量にある場合、硫化水素を発生させて生体、水草双方にダメージを与える

微量要素

機能 欠乏症状 過剰症状
ホウ素 ・細胞壁の生成に関わる
・糖代謝に関わる
・生長点の白化、黄化する ・過剰症状はあまりでない
塩素 ・光合成に関り、光化学系IIの必須因子 ・新芽がクッシャとした感じになる
・根が太く短くなる
・過剰症状はあまりでない
マンガン ・光合成おける酵素の中心要素 ・葉脈間に白い斑点のようなものがでる
・葉が黄色く変色する(変な模様みたいに見えることも)
・症状は光合成の盛んな葉に出る
・過剰症状はあまりでない
・葉緑素の形成に関わる
・体内の酸素の移動を助ける
・酵素の活性剤
・生長点の白化、黄化する ・リン、カリウム、銅、亜鉛、モリブデン、マンガン等の吸収を阻害する
亜鉛 ・植物ホルモンの代謝に関わる
・タンパク質の合成に関わる
・新芽の展開が遅くなる
・節間が短くなり、小さな葉が密集したようになる
・鉄、銅、モリブデン等の吸収を阻害する
・光合成や呼吸に関わる酵素を構成する ・生長点の白化 ・鉄、銅、亜鉛等の吸収を阻害する
・根がぜんぜん伸びなくなる
モリブデン ・硫酸還元酵素(硝酸を窒素として利用する)を構成する ・窒素代謝が阻害され窒素欠乏になる ・鉄、銅、亜鉛等の吸収を阻害する
ニッケル ・尿素を分解する酵素の活性剤 ・葉の先端から黄化 ・過剰症状はあまりでない

ざっと書き出すとこんな感じでしょうか。

欠乏症状は上から(新芽や生長点)始まるか、下葉から始まるかで大きく二つに分けることが出来ます。
元素は基本的に体の中で必要とされている場所に集まります。
そのため運搬しやすい元素(窒素、カリウム、マグネシウム等)の欠乏は下葉から
運搬しづらい元素(カルシウム、鉄等)の欠乏は上から始まるのが特徴です。

植物も生きていますから基本的にはエネルギーを重要な部分に集めます。
動かせるものは動かして足りない所に転流させてピンチを乗り切ろうとします。
足りないものは古い組織(下葉等)から集めるのが一般的ですね。
※植物の体の中を栄養や光合成産物等が移動することを「転流」と呼びます

過剰症状は基本的に水槽ではあまり出ませんが(入れ過ぎるとコケがでますが。。)
カリウムと鉄は注意です。

カリウムが大事なので~、赤くするには鉄分を~みたいな謳い文句が多いので入れ過ぎから過剰症状に苦しむケースがままあります。
それぞれ拮抗している元素の欠乏症状を招くので、一見すると肥料が足りないように見えます←コレがややっこしい!!!

肥料添加のコツは水槽を観察して「足りない部分」を掴んで「必要分だけ添加」することなんですが、これがまぁー難しいのですよ。だから楽しくもあるんですが。
簡単だとすぐに飽きちゃうでしょ。
今回はとっても長くなっちゃったのでここら辺で終わりたいと思います。
次回「水草に必要な栄養素 その②」では各元素にどう向き合っていくか、実践的な肥料施肥の方法を詳しくお話ししたいと思います。
しばしお待ちを!!

こちらも併せて読んで頂くと水草水槽への理解が深まるかもです。

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