植物と光合成
水草に限らず植物は光合成(炭酸同化作用)を行い、生命維持・成長をしてます。
水槽内で水草育成を行うにあたって、光こそが最も重要な要素であることを覚えておいてください。
炭酸同化作用を簡略に書くと下記の様になります。
この作用で出来たブドウ糖を直接利用したり、ブドウ糖と他のイオン(いわゆる肥料)を結合させ生命維持及び成長をしているわけですね。
光が不十分だと水草育成がうまくいかないというわけですね。
水槽への光の照射の仕方
よく水槽に光を当てたいからといって「窓際の明るい場所に水槽を設置しています」という方がいらっしゃいますが、絶対に止めましょう。太陽光をうまくコン トロールする事は恐らく不可能ですし、水温の上昇やコケの大発生を招くだけになってしまうと思いますので、やはり人工照明に頼るべきでしょう。
照明を当てるのに恐らく一番重要なのは、照射時間でしょう。毎日決まった時間に点灯し決まった時間に消灯してあげる事で、水草の体内時計を正常に作動させ、ひいては健全な成長をさせる事ができます。
水草も寝るってご存知でした?多くの水草は就眠運動と呼ばれる運動を行います。
消灯する前後には葉を閉じ、点灯する前後に葉を開く動作ですね。タイマーでキチンと照明時間をコントロールしていると、この就眠運動を見る事ができますし、健全な成長が見込めるわけです。また長過ぎる照射はコケの発生原因にもなりますので、1日8時間を目安に、規則正しく照射しましょう。なお、この8時 間は昼夜に関係無く設定しても大丈夫です。オススメはご自身が寝る時間から逆算して8時間が良いのではないでしょうか?朝はあまり見ませんもんね。
次に、水面に対してなるべく垂直に光を当てるのがポイントとなります。水面への光の入射角が垂直である時が最も水中に光が進入でき、逆に角度がつくと水面 で反射され、あまり水中に光が入っていかないからです。蛍光灯を使う方が多いと思いますが、例えば60cm水槽でしたら2灯式の器具を2セット使用するのが理想的と言えますね。上部フィルターが水草育成にあまり向いていないのは。物理的に上部フィルターを設置している部分には、照明器具を設置できない点で すね。
※モチロン光合成に重要な二酸化炭素が逃げやすい構造だと言うこともありますが….
照明器具の選び方
ほとんどの方はいわゆる直管型の蛍光灯を選ばれると思います。ちなみに白熱球などは総じて色温度が低く、コケの発生原因になりやすく、また照射熱も多く水温上昇の原因になりやすいので避けましょう。
まずは直管型の器具ですが、60cm水槽用でしたら各メーカーから1灯式~4灯式の器具が発売されていますので、お好みのデザインの物を選んで良いと思い ます。ただ、蛍光灯器具の多くは安定器を使用していますので、50Hz専用と60Hz専用になっている場合が多いので転勤の多い方は日本中で使用できるイ ンバータ方式の器具を選択するのも良いでしょう。インバータ方式は蛍光灯特有のチラツキも少なく、結果的に明るさも明るいので選択肢の一つにいかがでしょうか?
また、最近は電球型の蛍光ランプも各メーカーより発売されており、消費電力の割に明るく、また球自体にインバータ回路が内蔵されている為、結構オススメか もしれません。特に小型水槽に向いていると思います。デメリットとしてはランプの種類が限られている事でしょうか。
最後にメタルハライドランプに代表されるHID(高輝度放電灯)ランプがあります。
数年前までHIDといえば水銀灯が主流でしたが、ここ数年メタルハライドランプの低価格化が進み今ではメタハラが主流となっています。一番の魅力はメタハ ラの光の直進性だからこそ得られる、水の揺らぎでしょう。暗くした室内でみるメタハラの水槽の美しさはたまりません!(個人的感情?)
モチロン水草の育成にも効果的で、特に光の届きにくい前景草の育成には抜群の効果を発揮します。また、電気代に関しても5時間程度の点灯でも十分水草の育成が可能なことを考えると、さほど高くはありませんので、ぜひ選択肢の一つに入れてみてください。欠点としては赤い色の水草や熱帯魚の色があまり鮮やかには見えないので注意が必要です。
蛍光灯の種類
熱帯魚ショップでは各メーカーの各種蛍光ランプが販売されていて、どれを選べば良いか悩んでしまいますよね。まずは、光に関する用語を勉強してみましょう.。
光の三原色 | 光の三原色は「赤」「緑」「青」です.この3色を組み合わせればすべての色を表現出来ます。 |
波長 | 単位はnm(ナノメータ)で、光の電磁波としての幅を表します。人間が見る事が出来る可視光線は380~780nmで、380nmが紫の光でそれ以下の光を紫外線、780nmが赤の光でそれ以上を赤外線といいます。 |
色温度 | 単位はケルビン(K)で、光の色を数値化した物です。色温度が高い=青白い光、色温度が低い=赤い光です。日中の太陽光が5000K前後です。 |
光束 | 単位はルーメン(lm)で、光の量を表します.数値が高いほど明るく感じます。 |
平均演色評価数 | 単位はRaで、試験色票をその光源で照らした時に、基準光と比較してどれだけ忠実に再現できるかの値です。Ra100が基準光で、一般的にRa85程度ですとほぼ忠実に色が見えると言われています。 |
次に、販売されている蛍光管を分類してみましょう。
三波長形ランプ | 光の三原色である赤・緑・青に波長のピークを絞って発光させたランプです。基本的には明るいランプが多く、水草の光合成に重要な光の強さが得られるランプになります。 各色温度の商品が販売されています。 |
植物育成ランプ | 植物の光合成に有効な赤の波長と青の波長を強く発光します。もともとは園芸用として普及していましたが、最近はアクアリウム用に開発されたランプもあります。 明るさは暗めですが、水草の育成には効果的で、魚も鮮やかに見えます。 |
ではどのような組み合わせで使用すれば良いのでしょうか?
まずは基本的な光量を得る為に、三波長形ランプを2本は使用したいものです。例えば60cm水槽でしたら、三波長型を2本使用すれば良いでしょう。植物育成ランプも使用したいところですが、まずは光量を確保するのを優先させましょう。60cm水槽で4本のランプを使用するなら、三波長形×3本、植物育成管 ×1本で良いでしょう。
現在販売されている蛍光ランプは、どれも一定の基準をクリアしていると思いますので、正直どのランプを選んでも、そこそこの結果は出せると思います。
※全部同じといっているわけではありませんよ。
最も大事なのは、そもそも観賞する為に水槽を設置しているわけですから、観賞している方がきれいだと感じることのできる見え方なのが大事だと思います。ランプの種類で水槽の見え方は全く違ったりもしますので、ショップなどで使用しているランプを参考にしながら、お好みの組み合わせを探してみてください。