マメ知識

【マメ知識】水草水槽のフィルター選び

【マメ知識】水草水槽のフィルター選び

みなさんこんにちは!
アクアフォレストメンテナンス事業部の轟です!

本日は水草水槽のフィルター選びについてお話したいと思います!

水槽におけるフィルターとは「動力で水を循環させ、水中の汚れを取り除く装置のこと」です。
サイズや設置場所、モーターで循環させるもの、エアーで循環させるもの等、様々なタイプがあります。
また、フィルターの中に入れる「ろ材」もたくさんの種類があるので、いざ選ぶとなると迷ってしまいますよね!

そこで今回のブログでは、
・各フィルターの種類と特徴
・ろ材の種類と特徴
・水草水槽に最適なフィルターとは?
以上3点についてお話しようと思います。

注意!
ろ過能力で重要なのはろ過微生物たちの働きなので「良いフィルターを使う=水が透明になる」ということではないことに注意してください!
フィルター、ろ材=ハードウェアろ材に棲む微生物=ソフトウェアと考えると良いと思います!
今日はハードウェアのお話しという事です!!
微生物達の詳しいお話はこちらこちらをお読みください!

それではまずはこちらから!!

・フィルターの種類
まずは様々あるフィルターをざっとご説明しますね!
フィルターは設置場所によって下記の8タイプに分けることが出来ます。

①外部式フィルター
②底面式フィルター
③内部式フィルター
④外掛式フィルター
⑤上部式フィルター
⑥オーバーフロー式フィルター
⑦背面式フィルター
⑧加藤式フィルター

それでは詳しくご説明していきます。

①外部式フィルター
以前は水草水槽に主に使用されるフィルターでしたが、近年では外掛け式に次いで普及が進んできました。
各メーカーの努力により60cm企画の水槽セットに標準装備されることが多くなりましたね。
名前の通り水槽の外側(水槽下部や横)に濾過槽がくるタイプのフィルターです。
モーター部分が水槽内入るタイプモーターが本体に内蔵されているタイプに分かれます。
モーターが本体に内蔵されているタイプは水槽内に給排水のパイプが入るだけなので美観に優れているフィルターと言えます。
その代わり、フィルター本体が水槽外に出るため、水漏れ時のリスクの大きいフィルターです。
水槽内をスッキリさせるために水槽の外に器材を出した形なので、水槽周りは雑然としがちです。
キャビネットに隠す、配管をスマートにする等の工夫が必要でしょう。
空気を巻き込むことなく水を循環させることが出来る構造のため「CO2ロスが少ない事」、水槽上部を覆わない構造のため「ライトを水槽全体に満遍なく当てることが出来る」この二つの特徴から長年水草水槽のフィルターとして親しまれています。

メリット
・水面を広く開けることが出来るため、ライティングの邪魔をしない
・CO2ロスが少ない
・水槽内を広く使うことが出来る(モーター内臓タイプ)
デメリット
・水槽の周りに設置スペースが必要(水槽横、下部)
・水漏れのリスク
・比較的高価
※構造的にろ過槽内が酸欠になりやすいですが、CO2をしっかり添加して水草が光合成をしている調子の良い水草水槽なら基本的に酸素は飽和状態になっているのでデメリットにならないです

②底面式フィルター
古くからあるフィルターの1つです。
安価で単純なシステムですが、ろ過能力はかなり強くプロショップの生体販売水槽で最も使われています。
水槽底面にすのこ状の板を配置し水を循環させることでろ過を行うため、多くは砂利やソイルをろ材として機能させるようになっています。
エアーリフトにより水を循環させるタイプが主流ですが、モーターで水を循環させるものもあります。
底床材をろ材とするため、ろ材が詰まる=リセットになりやすく管理にちょっと技術を要します。
アクアリウム中級、上級者になるほど愛好する人が増えるのはそのためですかね。
モーターを使用する場合は外部式同様、空気を噛まず水を循環させることが出来るため、CO2ロスが少ないです。
また構造上、底床内を好気的に保つことができるので、底床内の環境が重要になる水草水槽と相性が良いです。
構造的に他のフィルターと組み合わせることが出来る為、各フィルターの吸水部分として使用することもあります(排水側に使用することもありますが稀です)

メリット
・安価
・ろ過能力に優れる
・CO2ロスが少ない(モーター式の場合)
デメリット
・管理に多少技術を要する
・フィルターの大掃除=リセットになってしまう

③内部式フィルター
これも古くからあるフィルターの1つです。
フィルター本体を水中に沈めて使用するのが特徴です。
本体のすべてが水中に入るので美観が悪いのが大きな欠点。
小型のタイプがほとんどなので小型水槽で使用するか、他のフィルターのサブとして使用することが多いです。
アクアリウムを長年やっている方は複数個持っていることも多いのでは??
単純な構造と取り回し易さにより、こちらもプロショップで使用されることの多いタイプです。
エアーで水を循環させるタイプはCO2ロスが大きいため水草水槽には不向きです。
大別すると
・スポンジフィルター

・投げ込み式フィルター
・コーナーフィルター

上記の3つに分けることが出来ます。
スポンジフィルター、投げ込み式フィルターはエアーで、コーナーフィルターはモーターで稼働させることが多いです。

スポンジフィルターはテトラ社のタイプが一番知名度が高いでしょうかね。
皆さん一度は見たことがあるはず。
グッピーやアピストの繁殖水槽用として最も使用されているのではないでしょうか?
見た目とは裏腹にろ過能力が高いものが多く、小型水槽なら十分にろ過することが出来ます。
投げ込み式フィルターは水作社のものが有名ですね。
一番最初に買った水槽はこのフィルターだったという方は多いのでは??
コーナーフィルターは最近になってポピュラーになりました。
こちらも水作のものが有名でしょうか。
コーナーフィルターはモーターで循環させるものが多いので水草水槽に向いています。
小型水槽で水草を楽しむなら十分選択肢に入るでしょう!

メリット
・安価
・手軽
デメリット
・美観が悪い
・構造的に大型水槽には不向き

④外掛式フィルター
比較的最近になって流通するようになったフィルターです。
後述する上部フィルターを小型化し水槽に引っ掛けて使用するようにしたものです。
水槽に引っ掛けて電源を入れるだけで使える手軽さが最大のポイントです。
構造上、ろ材スペースが小さなものが多いので、小型水槽に使用するか他のフィルターのサブとして使います。
ろ材を交換する際に手を濡らすこと無く作業を行えるため、初心者の方を中心に広く使用されています。
排水部分を水没させることでCO2ロスを少なくすることが出来るため、水草水槽にも向いています。
水槽背面に設置することが多いと思いますが、バックスクリーンが無いとろ過槽が丸見えになってしまい美観が悪いです。
流通量で言えばフィルターの中で一番多いのかな?
テトラのものが一番有名でしょうか。一度は目にしたことがあると思います。

メリット
・手軽
・比較的安価
・ろ材メンテナンスの際に水槽内に手を入れる必要が無い
デメリット
・ろ過能力はあまり強くない
・美観はイマイチ

⑤上部式フィルター
熱帯魚ブームを牽引したかつて最も使用されていたフィルターです。
各メーカーが競って販売していた60㎝レギュラーサイズの水槽セットには必ず含まれていましたね!
後述するオーバーフロー式フィルターを簡略して、水槽上部に設置するようにしたタイプです。
空気と水が混ざるように循環するので酸素がしっかり入る為、生物ろ過と相性が良いです。
上部にあるため、比較的メンテナンスしやすいと言えるでしょう。
水槽上部を占有(水槽の上半分程度)してしまう美観の悪さから最近ではあまり使われなくなりました。
生体を中心に飼育している水槽ではまだまだ現役ですけど。
メリット
・生物ろ過と好相性
・比較的メンテナンス性が良い
デメリット
・CO2ロスが多い
・ライティングの邪魔
・美観が悪い

⑥オーバーフロー式フィルター
水槽でお魚をまともに飼育出来るようになったのはこいつの登場のおかげでした。
水槽下部にもう一台水槽をおいてそれをフィルターにしてしまうというダイナミックなシステムです。
その構造から大型水槽に向いているタイプ。
構造上、水漏れのリスクがあるため、フィルターシステム全体に対する理解が必要です。そのため玄人向きです。
必ず水と空気が混ざるように循環するため、CO2ロスが大きく水草水槽ではあまり使われなくなりました。
他のフィルターと比べ桁違いにろ材を入れることが出来るので、大型魚や海水魚等の強力なろ過が必要な場面で使われることが多いです。
ろ過槽部分にヒーター等の器材をセットすることが出来るので水槽内をスッキリさせることが出来ます。
構造上、水の落下音がするため静音性は低いです。
フタをすることで軽減することは可能ですが、無音とはほど遠いです。
ここ最近、小型化したものがいくつか発売されているので今後の小型化に期待!

メリット
・ろ過能力が大きい
・大型水槽ほど割安
・器材類をろ過槽内に設置出来る
・オールインワンに出来る
デメリット
・CO2ロスが大きい
・小型水槽ほど割高
・システム全体の理解が必要
・水の落下音がする

⑦背面式フィルター
水槽内を仕切り背面やサイドをろ過槽として使用するタイプのフィルターです。
あまり目にすることの無いタイプです。水槽を仕切ってフィルター化するので狭くなってしまうのが最大の欠点。
オールインワン化することが出来るため、水槽外にまったく器材類が出さないように出来ます。
また、ヒーター等の器材をろ過槽側に設置することで水槽内をスッキリさせることが出来ます。
「オールインワン化」と「器材類を見せない」ことを両立できるタイプなのでもっと普及しても良いと思います!
全ての器材を水槽内にまとめるため水漏れのリスクが極端に少ないです。
その仕組み上、特殊な形状になってしまうことが多く周辺機材との互換性に苦労することが多いです。
そのため設置に技術を要するため玄人向きのシステムになってしまうのも欠点。
逆にDIY派の方にはオススメかもです。

メリット
・器材類をろ過槽内に設置出来る
・オールインワンに出来る
・水漏れリスクが無い
・CO2ロスが少ない
デメリット
・水槽内のスペースが狭くなる
・周辺機材との互換性が悪い

⑧加藤式フィルター
現在、GEXに所属している加藤氏が開発したユニークなフィルター方式です。
便宜上、私の独断でこう呼ばせて頂きます。
一言で表すと「水槽の横にろ過槽がくるオーバーフロー式フィルター」のような感じです。
連通管の原理でろ過槽と水槽を結んでいます。
こちらもろ過槽内にヒーター等の器材をセットすることが出来るので水槽内をスッキリさせることが出来ます。
オーバーフロー式と違い、なんらかのトラブルにより水漏れが起こるリスクが軽減されているので初心者の方でも安心です。
また、ろ過槽と水槽を離して設置することで「あたかも何も器材を使用していない」ように見せることができます。
現状、市販されているのはGEXより発売されている1種のみなので、今後の展開に期待です!
水槽、ろ過槽、連通管を兼ねる下板のセットが基本になると思いますので、60cm以上の水槽では流通上難しいと思っています(商売的にですが、、、)
皆さんから多数のお声があれば大きなサイズでも発売されるかもです。

メリット
・器材類をろ過槽内に設置出来る
・オールインワンに出来る
・水槽を広く使える
・上記三つを兼ね備え、かつ水漏れリスクが少ない
デメリット
・今のところ市販品は一種類のみ
・小型水槽限定になると思う(商売上)

以上です!ざっとまとめるとこんな感じです。
水草水槽おいてはろ過能力も大切ですが、美観も気にしたいところですね!
フィルターにおいての美観は「見えない」ということが一番だと思います。
どうしても見えちゃう部分は格好良くスマートに配管したいですね(某ガラス製品とか)

そのため美観を考えるなら水槽内に入るパーツが少ないフィルターが有利です。
①②は手に入りやすさ、昔から使われているので使用例がたくさんネットに転がっているので親しみやすいのか水草水槽で良く使われていますね。
ついで④でしょうか。小型水槽セットに必ず言ってよいほどついてくるので、そのまま使い続けている方も多いはず。
①②程では無いですが配管を隠しやすいのでバックスクリーンがあれば美観はそれほど悪くありません。

本格的な水草水槽としては使用機会は少ないですが、⑥⑦⑧はヒーターを含めてすべての器材をろ過槽内に設置出来ます。
ヒーターは邪魔ですよね~。盛り土を激しくやっている方は特に強く感じてるんじゃないでしょうか??
店みたいにエアコン管理の方には無関係なお話かもしれませんが、これはもー憎いくらい邪魔ですよ。
それがなんとかなるならそれだけでも採用価値がありますよね。
特に⑦⑧はオールインワン化も出来るので水槽周りもスッキリします。
インテリア性もありますので家族ウケも良いですよ!

※オールインワンとは
ようするに水槽内で全て完結している水槽のことです
「水槽の外に出るのは1本の電源ケーブルのみ」という感じで各種電源、配線、配管等で乱雑になる水槽周りとは無縁の水槽システムです

フィルターには構造上の問題や設置場所によって長所短所があります。
全てを兼ね備えるフィルターは今のところ無いかな~という感じなので「作りたい水槽」「管理スタイル」に合ったものを選ぶ必要があります。
「これがベストだ!!」というものはありません。どのタイプのフィルターを使っても努力しだいで、どんな種類のお魚、水草も育てることが出来ます。
ただ、スタイルにマッチしていないフィルターを使用していると、メンテナンスに余計に時間と手間がかかるので管理が大変ですよ!
そこで各タイプの特徴を表にしてみました。フィルター選びの参考までにどうぞ!!!!
私の独断と偏見によるフィルターチェック表です。
各項目の定義は↓な感じです。

✖→ダメ
△→いまいち
〇→良い
◎→とても良い

・美観
水槽内に入る器材が少ない、ろ過槽内に設置できる等、水槽に余計なものがなるべく入らないタイプは高評価
また、水槽周りもスッキリ出来るオールインワンタイプは◎としました。

・CO2ロス
水が循環する過程で空気と触れ合うものはCO2が空気中に逃げてしまいます。
逆に言うと、ロスを補うように多めにCO2を添加すればこの欠点は補えます。
CO2の適正量を知るにはこちらをお読みください!

・排熱
モーターから発生する「熱」の影響量です。
基本的に水中にモーターが沈んでいるタイプは水温上昇の原因になります。
これからの時期は気にしておくと良いでしょう(冬場は逆にメリットになりますが)
エアーポンプ等、水から動力ポンプが離れているものは高評価です。

・静音性
皆が気にする静音性。
どのタイプも各メーカーの努力により以前よりも静かになりましたよ。
オーバーフロー式、上部式以外はどれも静かと言って良いと思います。
同じパワーのポンプを比べてみると、どのメーカーのものでもあまり差が無くなりました。
キャビネット内にフィルター本体を収納等、水槽を見る人から距離が離れるとその分静かに感じます。
そのため外部式は高評価です。
※上部式の静音性はタイプと言うよりも今流通しているポンプに問題があると思う、、、

・ろ過能力
適合水槽サイズに対してのろ過能力です。
たくさんろ材を使用出来るものほど高評価です。
しかし、適合サイズ、適合飼育数を守っていれば、どのタイプでも大丈夫。
水草水槽においては、水草の水質浄化能力もろ過として考えることができるので、お魚メインの水槽よりも優先度は低いと考えています。
その分、水草の調子を気にしないとダメですけどね!

・コスパ
ろ過能力と商品価格のバランスです。
値段は商品によってピンキリなのであくまで参考までに。

・扱いやすさ
簡単に扱えるかということです。
呼び水、配管等をしなくてもすぐに使えるものほど高評価です。
高評価のタイプは初心者の方でも十分に扱えると思います。

・メンテナンス性
メンテ時の労力や時間が少なくてすむものほど高評価です。
メンテナンス性が悪いものを頻繁にメンテが必要な水槽に使用すると大変なので注意しましょう。
後述する「生物ろ過」のことを考えると、頻繁なメンテは逆効果になる場合があるので、たまにしかろ過を触らない管理をするor目指すならあまり重要な項目ではありません。

・水草水槽適正
私の主観が強く入っていますが、内部式と上部式以外は問題無く使用できると思います。
結局それらも工夫と愛で乗り切れるのでどのタイプでも美しい水草水槽を作ることは出来ます。
しかし、普段の管理はなるべく楽な方が良いと思いますので、適正が高いタイプをオススメします!
管理にかかるコスト(時間、労力、お金)はなるべく少なくして、レイアウト(構図、植栽、育成)にコストを集中させることも美しい水草水槽を作るコツですよー!

↓こんなフローチャートも作ってみました。
水槽サイズ別のオススメタイプです。
が、水草中心でも生体中心でもあんまり内容が変わらない、、、
違いは上部式が入るかどうかだけですね。
↓こちらはメンテ間隔別のオススメタイプ。
頻繁にメンテをする水槽(グッピー等の繁殖水槽、ベタマンション等)はそもそも水草水槽に向かないですね。
頻繁なメンテに向くフィルターは各種ブリーディング水槽に向いています!

スカッと透明な水を目指すならフィルターはしっかりと仕上げたいですね。
水草水槽ならフィルターは「触らず」に管理したいところ。
ろ過は微生物との関りがとっても強いのでその辺の詳しいお話はこちらこちらを読んでください!
続いてのお話はフィルターの中身のお話です。

・ろ材の種類と特徴
高性能なフィルターを使っても、中のろ材がダメダメならろ過は上手く機能しません。
ろ過能力とメンテナンス性のバランスを考えて選ぶと良いでしょう。
ろ材は大きく分けると↓の3つに分けることが出来ます。
※全てのろ材は生物ろ材としても機能しますが、ややっこしいのでまとめて生物ろ材のところでご説明します
それぞれ詳しくご説明致します。

・物理ろ材
ウールマットに代表される「目に見える汚れ」を取るろ材です。
最も簡易的なろ材で古くから使われています。
残りエサ等、大きな塊状の汚れが多くなる生体メインの水槽では重宝します。
安価なので侮りがちですが、ろ過能力は非常に高いです。
また、セットした瞬間から効果を発揮します。
強力なろ過が出来る理由は「目の細かさ」にあり、精密なろ過が出来ます。
半面、目詰まりを起こしやすく、マメなメンテナンスが必要です。
詰まったら基本的に交換する必要があります。

メリット
・安価
・ろ過能力が高い
・即効性がある
デメリット
・目詰まりしやすい
・マメな交換が必要

・化学ろ材
なんらかの作用によって水槽内の汚れや不要なものを吸着するろ材です。
目には見えないような大きさの有機物や硝酸塩等の酸化物も取り除いてくれます。
イオン交換機能による軟水化作用や、塩基置換能力(CEC)による肥料分のバランス調整等の特殊な能力を持っているものもあります。
吸着作用には限界があるので、定期的な交換が必要です。
また、病気発生時に投薬する際、吸着ろ材を使用していると薬を吸着してしまい薬効が無くなってしまうことがあります。
ようするに化学ろ材は水槽内の「良い物も悪い物」も吸着するということです。
そのため、水槽のコンディションと化学ろ材のメリットデメリットを把握して使用すると効果的ですよ!
化学ろ材には主に3種類あります。
それぞれ特徴とメリット、デメリットが違いますので詳しくご説明致します!

①活性炭
もっとも流通量の多い化学ろ材です。フィルターの初期ろ材として最初から入っていことも多いです。
特殊な製法で細かな空隙を多くした炭のことを活性炭と呼びます。
ファンデルワールス力によって主に「有機物」を吸着します。
炭は「炭素」の塊なので、同じ「炭素」を含む有機物を優先的に吸着します。
有機物は微生物の働きにより分解でアンモニア等を発生させるので、有機物が分解させる前に吸着することで有機物由来で発生する負の作用を未然に防ぐろ材です。また、有機物に由来する農薬も吸着する作用があります。
そのため、有機物量の多くなりがち&新しく導入した水草に付いている農薬が問題になる「水槽セット初期」にオススメのろ材です。
流木から出るアクを吸着するので、活性炭を使う場合はアク抜きをせずに流木を使用することが出来ます。

メリット
・有機物を吸着する(白濁、汚れの蓄積を予防)
・農薬を吸着(すべての農薬を吸着するわけじゃないので注意)
・流木のアクを吸着
デメリット
・有機物量が少なくなることで微生物の発生量が減る
・定期的な交換が必要
・魚病薬を吸着し無効化してしまう

②ゼオライト
理科の実験で使った「沸騰石」はじつはこれ。
こちらも活性炭と同様に細かな空隙を持ち、ファンデルワールス力による吸着能力を持ちます。
一番の特徴は「陽イオン交換能力」による軟水化作用と塩基置換能力(CEC)による肥料分のバランス調整能力を持つことです。
一時期、セシウムを吸着してくれるということで話題になったのはこの陽イオン交換能力のためです。
デメリットとして考えるかは水槽しだいですがゼオライトの吸着は可逆的なので、一度吸着したものを再度放出します。
例えば、カメ水槽にてアンモニア除去を目的としている場合は再放出してしまうと元の木阿弥なのでデメリットですが、水草水槽ならセット初期のアンモニアが高濃度の時期は吸着し、アンモニアが少なくなった頃に徐々に放出することから肥料バランスをとっているのでメリットとして考えることが出来ます。

ゼオライトの陽イオン交換の優先順位は下記の通りです。

セシウム(Cs+)>カリウム(K+)>アンモニウム(NH4+)>ナトリウム(Na+)>カルシウム(Ca+)>鉄(Fe+)>マグネシウム(Mg+)

上記のように水草の必須元素であるカリウム、アンモニウム、カルシウム、カルシウム、鉄、マグネシウムも陽イオン交換能力によって吸着保持します。
また、カルシウム、マグネシウムを吸着することによって軟水にするため水草水槽と相性の良い化学ろ材です。
肥料を入れすぎた場合は吸着し保持、肥料が水槽内に少なくなると徐々に放出する特性は水草水槽にうってつけなんですがイマイチ人気が無い。。。
再放出の部分がかな~り悪いイメージを作っているのだと思いますが、普通に使えますよ!!
というか水草水槽ならデメリットほぼ無いと思うのですが。
水草水槽で一番難しい「施肥」をカバーしてくれる頼もしいろ材です。
施肥についての詳しいお話はこちらこちらこちらこちらをお読みください!

注意!
陽イオン交換能力は塩と相性がとっても悪いです。
塩分があると塩分の持つナトリウムを強力に吸着してしまいます。
結果、吸着している他のすべてのものを放出します。
ゼオライトを使用している場合は塩は入れないようにしましょう!
金魚、メダカ等の調子が悪い時に塩浴をよくするお魚に使用する際は特に注意しましょうね!!
イオン交換の詳しいお話はこちらをお読みください!

メリット
・軟水化作用
・肥料分のバランス調整
デメリット
・吸着したものを再放出する(場合によってはデメリットになる)
・塩が入っている水槽には使えない
・魚病薬を吸着し無効化してしまう

③活性アルミナ
最近になって流通するようになったろ材です。
これもイマイチ普及していませんが効果は強力です(我々プロショップの告知不足ですね。。。)
「酸」を吸着する特徴があり、他のろ材ではどうすることも出来ない硝酸、リン酸を吸着し除去することが可能です。
また、硝化細菌等が出す酵素を吸着して保持する力があります。硝化細菌は酵素を使ってアンモニアや亜硝酸を分解しているので、アルミナが酵素を保持していれば菌がたとえ死滅したとしても、酵素が残っているのでアンモニアや亜硝酸を分解することが出来ます。
そのため、アルミナをろ材として使用していれば、フィルター清掃の際に菌が減ったとしてもろ過能力の減少を防ぐことが可能です。
これも吸着反応は可逆的で高温で処理すると、吸着したものを放出します。
高温での処理はご家庭では正直難しいですので、事実上、吸着したものは放さないと思って頂いて良いです。
そのため、硝酸、リン酸を吸着し除去する場合は定期的に交換する必要があります。
特に硝酸は水換え、水草に使ってもらう以外で除去することが難しいので、こいつを上手く使えば換水のスパンを伸ばすことが可能です。
また、硝酸、リン酸は「黒ひげゴケ」の原因になっていると思われるので、黒ひげゴケでお悩みの方にオススメのろ材ですよ!!

メリット
・硝酸、リン酸を吸着する
・硝化細菌等が出す酵素を保持する
デメリット
・定期的な交換が必要
・魚病薬を吸着し無効化してしまう(種類による)

・生物ろ材
硝化細菌に代表されるろ過微生物達が繁殖する「家」のことです。
物理ろ材、化学ろ材と違いこれだけでは機能しません。微生物が繁殖して初めて機能するようになります。
バイオフィルム、活性汚泥が発達出来ればどんなものでもろ材として使用することが出来るので、極端に言うとなんでも良いです。
砂、砂利、石、ウールマット、活性炭、ゼオライト、アルミナ等全て生物ろ材として機能します。
土地が多いほうが「家」がより多く建つので、表面積のより多いものがろ過能力が高くなります。
生物ろ材として販売されているものは、多孔質のセラミックを使ったものが多いですね。
より細かな粒のものの方が表面積が多くなるので、より精密にろ過をすることが出来ますが、その分、目詰まりしてしまうのでろ材洗浄、交換のスパンが短くなってしまいます。
バイオフィルム、活性汚泥が発達しないとろ過が機能しないという仕組み上、マメなメンテは逆効果になってしまいます。
そのため、適度な空隙があるものが生物ろ材に適しています。
生物ろ材は形、材質ともに様々なものが流通しているので一概にメリットデメリットが言えません。
なので逆に「これは水草水槽の生物ろ材に適さないぞ」という点をお知らせします!
(ろ過微生物の詳しいお話はこちらこちらを読んでください!)

・細かすぎる
・材質が脆い
・硬度を上げる

どれもろ材洗浄のスパンを短くしてしまう要因です。
↑でもお話したように目が細かすぎるとすぐに目詰まりしてしまいます。
材質が脆いと崩れて目が細かくなるので、、、以下同文
軟水を好む水草にとっては硬度が上がるのは大問題です。
特に安いろ材(おまけでついているような)は注意してください。
以上の事に注意して選べば大丈夫でしょう!

最後はこちらです。
で、結局何がいいの??ということです!

・水草水槽に最適なフィルターとは?
今のところ、ベターな選択は「外部式フィルター」でしょうか。
なんともヒネりの無い回答ですが、、、
ただ、設置、管理にやや慣れが必要なので小型水槽(30㎝以下)なら外掛式フィルターも良いと思います!

水草を楽しむ以上は見た目にキレイであることが重要なので、配管、配線がスッキリしているものが良いでしょう。
外部式フィルターはろ過器本体が水槽の外にくるので水槽内をスッキリさせることが出来ます。
ろ過能力も水草水槽にとっては十分にあるので、各メーカーが推奨する水槽サイズのものを使えば問題無いでしょう。

ということで、水草水槽でフィルターに迷ったら「外部式フィルター」をオススメ致します!
私が管理しているメンテ先では、そのほかオーバーフロー式、底面式を使って管理しています。
今回書いたように各フィルターのメリットデメリットを把握して管理すれば、様々なフィルターで水草水槽を作ることが出来ます。
(でも上部でやれって言われたらイヤですけど)

ろ材のセッティングは、生物ろ材と活性炭の組み合わせがオススメ。
物理ろ材は目詰まりのスピードが速いので入れないことが増えました。
セット初期に一時的に入れることはありますが、セット3ヶ月程度で取り除くことが多いです。
活性炭もセット3ヶ月程度で取り除き、以降は生物ろ材オンリーで管理しています。

強力はろ過を実現させるためには、ろ過微生物達をしっかり繁殖させることが重要なので、頻繁にろ材をイジるとせっかく出来ている微生物達のコロニーを壊してしまうことになります。
洗ったくらいで、ろ過微生物が全滅することは少ないですが、透明度の高い水槽水にするためにはろ材をイジらず熟成させる必要があります。
そのため、ろ材のセッティングはフィルター洗浄のスパンを考えて行うと良いです!
なるべくろ材を洗わずにすむように目詰まりの少ないものを選ぶのがポイントです。
(ろ過微生物の詳しいお話はこちらこちらを読んでください!)

私は活性炭はキョーリン社「ブラックホール」、生物ろ材は太平洋セメント社「パワーハウス ソフト Mサイズ」を使っています。
現在、店舗の展示水槽、メンテナンス先の水槽はこの組み合わせがほとんどです。
様々試しましたが今のところコレに落ち着いています。
特にパワーハウスは他の生物ろ材と一味違う性能だと思います。
目詰まりとろ過能力のバランスがとても良い形状と活性アルミナが練り込んであるからなのか、洗浄してもあまりろ過能力が落ちません。
(アルミナがろ過細菌の酵素を保持しているから??と推測しています)

ろ材のセッティングで種類、サイズを変えて層状にする方法がありますが、これあんまり意味無いと思います。
洗う時大変だし。
また、より目の細かなろ材の方が表面積が多くなるのでカタログスペック的にはろ過能力が高いことになりますが、実際に使用するとすぐに目詰まりしてしまってメンテが面倒になりますよ。しかもマメにメンテしなきゃだからいつまでもろ過が安定しないという、、、
努力して層状にしたのに、努力して目詰まりしないようマメにメンテしているのに透明な水にならない。。。という罠です。
これでは踏んだり蹴ったりなので、欲張らず水通りの良いタイプがオススメです。
※逆に短期決戦なら、目の細かなろ材をオススメします
その分、立ち上がりが早く、ろ過も強力なので
我々もイベント等の短期決戦時はろ材を全てウールマットにしたりして対応しています

↑でも書きましたが、活性炭はセット3ヶ月程度で取り出し(交換)しますが、その分のスペースは生物ろ材を詰めずに空けておきましょう!
状況に応じて、化学ろ材、水質調整剤を入れることで様々なシーンに対応可能です。
・黒ひげゴケが出た!→活性アルミナ
・硬度を下げたい!→ゼオライト、ピート(水質調整剤)
・急に濁った!→活性炭
みたいな感じでろ材を追加or交換することで対応出来ます。

いずれにしても一度セットしたらあまりイジらない方が良い部分なので、セット時に妥協せずに良い物を使ってくださいね!

おまけ
ある程度慣れている方は底面式フィルターにチャレンジしてみるのも面白いでしょう。
基本的にろ過が崩壊したらリセットになってしまうのでそれだけ注意ですが(あんまり起きないですけどね)
驚くほどのろ過能力なので、中級、上級アクアリストの方はぜひ取り入れてみてください!

盛り土をしているレイアウトでは、フィルターの吸水パイプの設置場所に苦労しますが、底面式と組み合わせると水槽の「底」から水が吸えるので水回りが良くなる&邪魔な吸水パイプを奥へ隠すことが出来ます。
↓は自宅の水槽の画像ですが、吸水パイプを底面のスノコに直結しています。
ニッソー社の底面フィルター「スライドベースフィルター」には、呼び径13φの塩ビパイプがぴったりはまります!
専用にあつらえたのか!というくらいキレイにはまります。
塩ビパイプはホームセンターに大抵おいてありますので、興味のある方はぜひ取り入れてみてください!

次回、自宅で作る水草水槽ではろ材の大部分をゼオライトにして実験する予定です。
肥料過多への対応力や、そもそも長期維持に適しているのか?予め肥料(カリウムとか)に漬け込んだら固形肥料みたいな感覚で使えるかな?などなど
気になるところを試してみることにしています。
好結果だったらそのうちご紹介しますね!

以上、これにてフィルターのお話はお終いです。
何度も書きますが、ろ過能力はフィルター本体というよりも生物ろ材に棲むろ過微生物達の状態に大きく左右されます。
なのでしつこいくらいにリンクを貼りましたが、透明な水にしたいならろ過微生物達のことを知らなければいけません。
毎度のことでアレですが長い記事ですけれども、こちらこちらも一緒にお読みください!
皆様のアクアライフの参考になれば幸いです!!

「白濁」への対処も併せて書く予定でしたが。
長くなってしまったので次回に持ち越します。。
次回もお楽しみに!!
よろしくお願いします!!

アクアフォレスト出張サービス

アクアフォレストではお客様のご希望に合わせ、豊富な経験と知識で様々なご要望にお答えします。
水草レイアウトの制作はもちろん、雑誌撮影や各種イベント用水槽の設置なども承ります。
水草、熱帯魚のことに関してご要望がございましたら、まずは一度ご相談ください。
ご相談、お見積りは無料です。

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